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溶けかけた氷で滴っていたグラスの水滴(昔の日記)

溶けかけた氷で滴っていたグラスの水滴がある。

私はその水滴が机に残っているのを見ているだけ。

セミがジリジリとないている。

泣いているのか笑っているのか。

その音を聞きながら漠然と飲み干したはずのアイスコーヒーを見ると

グラスは満たされ

もう一杯コーヒーが注がれていた。

そこには確かに一瞬の何もない時間があった。

その一瞬で私はまたコーヒーを淹れたらしい。

でもそのことすら煙にまかれた出来事のように不確かだ。

新しく引っ越した家はあまりにも静かすぎて、古い木の匂いを嗅ぎながら

窓の外の向こうの木が風に揺れているのを見るのが日常になりつつある。

買ったばかりのソフトクリームがいつの間にか溶けてしまうように、

この暑い暑い夏もいつのまにか溶けてしまうね。

こんなに夏って暑かったかしら。

自分がもしソフトクリームだとしたらこんな溶け方は嫌だと思う。

その毎日は記憶となり、不完全なまま変形していく。だから暑かったことも忘れ去る。

写真や動画はあまりにも鮮明で、冷静に記録として残り続ける。

(冷静すぎて、でも鈍感すぎて・・・。ああ、頼むから。自分は自分で居させてくれ。その自分が時折よくわからなくなるけど。ただただ影響を受けたく無い時があるんだ。)

不完全なままが心地いい時だってある。

いつまでも悩める自分がいる。

悩みは無駄だって思うけど、悩みでは無いのかもしれない、ただの好奇心かも。

それらの考えをうまく形にあらわせない『もやもや』が私の90%を形成していたとしても、それには嫌な気持ちはない。むしろ


その状態を好んでいようと思える。その理由はわからない。それを探している。

この部屋で一人でいると、世の中で起きている事実がまるで虚無のよう。

それは離島に取り残されたように、孤独で、別の世界で生きているようだが、こちらの方が自分にとっては真実だ。

ただ、これが今の私の精一杯なんだと、自分に言い聞かせる。

懐疑心が募ってルネ・デカルトみたいになったと思ったら、人のいいアンパンマンみたいになってすぐに弱る。

常に矛盾と共存しているけど、なるべく心は透明な水のように保っていたい。

淀むとすぐに枯れてしまうから。

どう在ろうと、静かにセミは私に語り続ける。


なんて言っているかは、まだわからないけど。


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